darkmeteor’s blog

場末のライターの徒然日記

メディア業界の現実と虚構

■「死」すらも塗り潰す「憧れ」の光

10月1日には就職情報媒体「リクナビ2018」が開設。

各企業のインターンや合同説明会など、様々なイベントや情報が解禁され、電車内でもリクルートスーツに身を包んだ大学生の姿を目にする時期になった。

その就活前線の中でも、十年以上前から”斜陽”と言われながらも未だに人気の業界が「メディア」だ。

中途の求人情報媒体においても、メディア業界もしくはクリエイティブ職には他業界他業種(事務職を除く)の約5~10倍の応募者数が募るほど。

在職者においても、情報発信や自己表現を仕事にするこの業界への憧れというものは根強い。

 

そんな最中、昨今ニュースにもなりネットを騒がせているのが某広告代理店の新卒女性の自殺。広告業界大手三社を表した単語”DHA”の「D」。一般にも広く知られるほどの大企業だ。

しかし、恐らくはこんなニュースが出ても、この業界ひいてはDへの就職希望者は後を絶たないだろう。

それくらいこの業界というのは、「憧れ」によって支えられている。

だからこそ、悪習ですらそう簡単に変わることはなく、死者を出しながらもしっかりと歯車は回り続ける。

 

■好きだからではない、それしかできないからここにいる。

さて、転職組でかつたった2年程とはいえ当の筆者もその業界にいる。

Dのケースは極端な事例とはいえ、広告代理店・放送局・新聞・出版・音楽と、各業界共にその過酷さに大差はない。

求人広告の時点で年休100日未満の表記も珍しくないし、求人広告でその表記であれば十中八九休日出勤などでそれを大きく下回るのが実情だ。

かくいう求人広告を扱うRも封建制という言葉が似合うほどの体育会系の体質。

番組製作でも、数十人いた同期が3年で1人だけに。新聞に至っては記者会見に集まった記者たちが「あそこのあの人辞めた」なんて毎回話している始末だ。

企業によっては新人が一週間以内に辞めるのも珍しくない。それくらいハードかつ理不尽な状況が状態化している。

 

しかし何故そうある中で彼らはこの業界で続けていくのか。

理由は単純明快。「それしかできない」人たちの集まりだからだ。

営業や事務職はともかく、「クリエイター」に分類される現場で活躍する彼らは往々にして特定の才能に特化している。

文章・映像・写真など種類は様々だが、皆共通して「普通の仕事」に適性がない。

落ち着いて事務作業なんて無謀だし、そもそもの思考回路がズレている分組織への馴染みも悪い。

それは彼らからしても「組織化」に重点を置いた学校教育の時点でその事実には気づいている。

だからこそ、そこで自分が特化したスキルを活かして働くしかないのだ。

中小企業ともなれば、安月給であるにも関わらず。

 

当然将来クリエイターとなる彼らも、きっかけの一つは「憧れ」だ。

しかし入社後数ヶ月で「憧れ」は廃れ、理不尽なハードワークの中で無理やり技術を身に着けていく。

そしてその中でスキルを得られた極僅かな者だけが、仕事をルーティン化でき、日常をハードとも思えなくなる一種の麻痺状態に陥る。

幸い飲食業界のように組織単位としての洗脳ではなく、「周囲がそうだから」という理由で個々人として勝手にその状況を受け入れている上に、日々バッタバッタと人が辞めていくので周囲も慣れ、限界を迎えた人の退職までの流れも早い。

チャラい業界人が多いのも、彼らにはのらりくらりとかわせるメンタルがあったからに過ぎない。純粋で真面目であるほど、その落差に絶望する。

そんな異常な退職率の中でも「憧れ」で入ってくる若者は絶えない。そしてまたその中から「選別」が行われ、適性のある者だけが「憧れ」を失いながらルーティンワークに臨む。そのサイクルが永遠と繰り返されているのがメディア業界の実態だ。

もちろん芸能人に会う機会も少なくない。中には付き合って結婚するような者もいるだろう。

しかしそうなるまでに至るまで続けられるのは極僅かだ。しかも、そんな華やかさを享受できる保障もない。それに中小企業や下請けではあり得ない話だ。

狭き門をくぐり抜けてたどり着いた先は、才能に特化した人間たちが日々レッドブルリポDで寿命を削りながら働く地獄のような世界。

学生が想像する「華やかな世界」は、遠く幻に近い。

 

■「それでも」と思うなら

諦めきれない夢であるなら、挑戦する価値はある。

大学生であれば、恐らくそんな地獄の世界は想像もつかないし、きっと自分には訪れないだろうという楽観的観測も加わる。

他業界では得られないような経験もできるだろうし、苦難を味わわずしてその壮絶さを認めることはできないだろう。

しかし、死ぬほどの苦しみを味わうくらいなら元々この業界には適性などない。

何度も言うが、残っている人間の殆どは「これしかできない」と自覚した上でやっているだけだ。周りに気を遣っているわけでも体裁を気にしているわけでもない。

辛いなら迷うことなく辞めるべきで、探せば同業界でも今よりマシなところは意外と出てくる。

異業界でもライターや編集者、制作スキルを求める企業はあるし、本気で向いてないと思ったならいわゆる普通の仕事の方が適性があるということだ。

30代を超えたならリスキーな賭けなので当然オススメはしない。

結局体力なしに務まる仕事ではない。

 

■目指すならコネか経験

残念なことに目指す学生は相変わらず多いのがメディア。

不人気業界と比べたら大企業の新卒の入社倍率は何百倍か知れない。

そしてキー局のアナウンサーを見ても分かるように、メディア業界のコネは強い。

芸能人や大企業のご子息クラスなら無条件で入れるし、役員クラスでも二次試験くらいまではパスできる。

それがないのであれば学生時代にどれだけ経験を積めるかだ。

よくあるサークル活動でも大会実績など目に見える成果があったり、インターンや大きいサークルで企業との繋がりを作ったりというコミュニケーション面。(ex:ミスコンなど)

そして映像制作やデザイン会社などで現場で使う実務経験を体得しておく、などなど。

学生の内にやれることはある。

少なくともボーっとサークル活動してバイトしてて大企業に入れることはない。

そこよりももっとキツく安い中小に入れて万々歳だ。

そして何より、これを読んで尚、自分ならいけると思っているのであれば致命的に才能がないか、天才的な才能があるかのどちらかだ。とりあえず試してみる価値はある。

 

何にせよ、メディア業界は想像しているような華やかな企業は殆どない。

コーポレートサイトが綺麗なのも、残業を重ねているクリエイター達の血みどろな作品の一部。名前を聞いたことのある企業ですらそんな体たらくだ。

もっと言えば、「好き」を基準にする職業で楽なところはない。アパレルやゲームなどに代表されるように。

そしてこの業界に一番向いていないのは「普通」に過ごしてきた人たちだ。学校で窮屈な思いをしてきたような人の方が活躍はできるだろう。

家柄も成績もそれなり、見た目もファッションもその辺にいる大学生みたいな人たちは、残念だが適性はない。すぐに他の業界を見るべきだ。