日向坂トゥデイ

2019年3月27日に「けやき坂46」から改名しシングルデビューした「日向坂46」に関する情報や感想を投稿していきます。

日向坂46、変化と成長を続けるセンター・佐々木美玲。彼女の『ハッピーオーラ』はいかにして生まれたのか。

10月20日NHK総合テレビで放送された音楽番組「うたコン」内にて、けやき坂46(日向坂46の前身グループ)の楽曲「ひらがなけやき」が披露された。歌唱したのは日向坂46の一期生、潮紗理菜(22)、影山優佳(19)、加藤史帆(22)、齊藤京子(23)、佐々木久美(24)、佐々木美玲(20)、高瀬愛奈(22)、高本彩花(21)、東村芽依(22)の9名。同楽曲はけやき坂46の一期生として加入した彼女たちに初めて与えられた楽曲で、地上波では初披露。放送後には各メンバーが同楽曲を披露できた喜びをブログに綴った。

 

その中でも筆者の目に留まったのが、10月23日に投稿された影山優佳のブログ「つうがくろ」だ。

 

www.hinatazaka46.com

 

同ブログでは一期生・佐々木美玲と共に撮影した写真がアップされており、以下のようなコメントが添えられている。

 

この衣装を着てる時の雰囲気が当時とかなり違くて、
大人になって、きれいになって、垢抜けて、
ほんとつよつよみーぱんだなって思いました!
影山 優佳 公式ブログ 2020.10.23 20:53

 

当時から彼女を知るファンも、日向坂46で初めて彼女を知ったファンも、多くのファンがこのコメントに共感できるのではないだろうか。それほどまでにこの佐々木美玲というメンバーは、加入以来大きく成長と変化を遂げてきた。

 

佐々木美玲の加入は2016年5月。既にグループを卒業した長濱ねる(22)、井口眞緒(24)、柿崎芽実(18)を含めた一期生12名でけやき坂46としての活動を開始した。2020年8月に公開された映画『3年目のデビュー』や、けやき坂46時代のエピソードを書き下ろした書籍『日向坂ストーリー』を見ているファンには周知の事実だが、彼女たちのスタートは決して順風満帆なものではなかった。

 

www.amazon.co.jp

 

結成から1年近く仕事と呼べる仕事のようなものはなく、2017年3月に開催された『けやき坂46単独公演』(Zepp Tokyo)で見せた彼女たちの表情にはまだ素人さながらのあどけなさが残っていた。一方、同公演中にZeppツアーの開催が発表されるなどグループにとって前向きな話題が飛び出し、いよいよ彼女たちの躍進が始まるかに思われた。しかしその矢先に起こったのが、ファンにとっては佐々木久美の『TIF激怒事件』と並んで有名な『楽屋立てこもり事件』だ。

単独公演からわずか2週間後の同年4月、『欅坂46デビュー1周年記念ライブ』(代々木第一体育館)が開催され、同ライブでけやき坂46のメンバー追加オーディションを同年夏に開催することが発表された。

このオーディションは小坂菜緒(18)をはじめ、後に日向坂46を牽引する2期生メンバーが加入するきっかけとなった転換点とも呼べるものだったが、当時を振り返った1期生・佐々木美玲は「私たち(1期生)も活動が始まったばっかりで、すぐ追加メンバー募集ってくると『私たちって意味ないんだ』って思っちゃって、その時はショックで本当にボイコットしようとしました」(『日向坂で会いましょう』2019年4月7日放送分より)と語っており、この時に彼女から出た「みんなで辞めよう」は日向坂46の歴史の中でも特に有名なセリフとなった。日向坂46としての1stシングル『キュン』の特典映像でもその当時の心境を語っている。

 

www.youtube.com

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

 

しかしスタッフからの激励もあって彼女たちは絶望の淵から立ち直り、見事にZeppツアーをこなしていくようになる。当時まだ一般の中学生として『Zepp Namba公演』、『Zepp Nagoya公演』のライブビューイングに参加した小坂菜緒は公演の感想を以下のように語っている。

 

私は、大阪公演と名古屋公演をライブビューイングで拝見していました。
大阪公演はオーディション前、名古屋公演はオーディション期間中でした。
 
私は初めて、大阪公演で歌って踊ってるけやき坂46を見て、かっこよすぎて、感動して涙が出てきました。
その時に、同じステージに立ちたい。けやき坂46になりたい。と強く思い、オーディションを受けることを決意しました。
小坂 菜緒 公式ブログ 2017.12.21 11:47

 

このツアーで見せた彼女たちの努力が、自分たちのカラーを見つけようとがむしゃらに駆け抜けた姿が、後にグループの顔となる小坂の心を動かし、同時に多くのファンを獲得していった。

 

だが一期生の悲劇はこれだけで終わらない。同年9月、けやき坂46を代表するメンバー・長濱ねるのけやき坂46兼任解除が発表。欅坂46専任となり即日中にグループを離れることとなった。さらにこの発表の2日後に長濱不在の『Zepp Sapporo公演』が開催。後にキャプテンとしてグループを牽引する佐々木久美はこの日の公演をこう語った。

 

ひらがなけやきのハッピーオーラを
今まで以上に全開でやりきろうと意気込んだものの、
ステージに立つまではとても不安でした。

 

でも、いざ始まると
見にきてくださっている方全員が
私達のことを笑顔で見てくださりました。

ライブビューイングでも見てくださっている方々がいました。



11人のライブを最初から最後まで
一緒に楽しんでくださりました。

佐々木 久美 公式ブログ 2017.9.29 11:17

 

一期生にとっては青天の霹靂とも言える発表だったが、蓋を開けてみれば多くのファンが長濱抜きの彼女たちに声援を送り、公演は大成功に終わった。続く11月の福岡公演も成功を収め、ツアーファイナルとなる『千葉・幕張メッセ イベントホール公演』も柿崎芽実が骨折により参加できないアクシデントが起きたものの、彼女たちの集大成を飾るに相応しいものとなった。アンコールの『W-KEYAKIZAKAの詩』では多くのメンバーが歌唱中に涙を流した。

 

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

 

このツアーを経てメンバー全員が変化と成長を遂げ、かつてのあどけなさは完全に無くなっていた。その中には当然「みんなで辞めよう」と口にした佐々木美玲も含まれていた。

 

そして彼女の変化と成長は一つの形となって現れる。2018年3月にリリースされた欅坂46の6thシングル『ガラスを割れ!』に収録されたけやき坂46の新曲『イマニミテイロ』で美玲がセンターに抜擢。同年6月に発売されたグループ初のアルバムにしてオリコン週間アルバムランキング1位を獲得した『走り出す瞬間』のリード曲『期待していない自分』のセンターにも彼女が抜擢された。

グループ単独でリリースする初の作品『走り出す瞬間』でのセンター抜擢は、実質的にグループを代表するメンバーに選ばれたの同義。名実ともに改名までのけやき坂46を牽引する存在となった。かつて本気でグループを辞めようと考えた少女の思いがけない大躍進だ。

 

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

 

一方で彼女のセンター抜擢には疑問の声も少なくなかった。

美玲はグループ初の楽曲となる『ひらがなけやき』を含め、MV化された楽曲では常に2列目(最後列)で、決して目立つ存在ではなかった。むしろ『ひらがなけやき』『誰よりも高く跳べ!』で長濱ねるとWセンターを務めた柿崎芽実や、『それでも歩いてる』でセンターを務めた齊藤京子、常に1列目(フロント)で存在感を放ってきた加藤史帆が適任ではないかという声も上がっていた。

 

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

 

たがこちらも蓋を開けてみれば、という結果になった。

アルバムの発売を記念した東名阪ツアー『けやき坂46「走り出す瞬間」ツアー2018』は全公演が大成功に終わり、それとともに美玲のセンターを疑問視する声も収まった。何より彼女が堂々と、そして楽んで舞台を駆け回る姿は、グループが掲げていたテーマ『ハッピーオーラ』そのものだった。そして『期待していない自分』のセンターに抜擢された時の美玲はこう語っている。

 

今回私がセンターで納得しない方ももちろんたくさんいると思います。


でも私が今それを気にしてもどうにもならないし、それなら今センターを務められたから一生懸命頑張るしかないなって思います。


みんなの前に立ってるいじょう、今まで以上にちゃんとしなきゃなって思います。


前に立って初めて、今まで自分に甘かったなって思うことも沢山ありました。



とにかく、自分らしく頑張りたいなって思います。

たくさん不器用なことはあるけど、一つ一つ頑張りたいです。



頑張ります。

佐々木 美玲 公式ブログ 2018.5.31 12:08

 

この言葉どおり、彼女はファンに全力投球の姿を見せた。

『期待していない自分』のMVでは思いがけない表現力の高さを見せ、アルバムに収録されたソロ曲では高い歌唱力を披露。ライブでは持ち前の明るさと愛らしさに溢れた笑顔で多くのファンを魅了した。特にその表現力は注目を集め、2019年1月には女性シンガー・Aimer(エメ)のトリプルA面となる16thシングル『I beg you/花びらたちのマーチ/Sailing』に収録された『花びらたちのマーチ』のMVに出演。けやき坂46知名度拡大に貢献した。

 

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

 

けやき坂46に入り急成長したかに見える美玲だが、実は彼女の潜在能力の高さは加入当時からピカイチだった。オーディションの審査員から"special"を意味するS評価を付けられた長濱ねるから「完璧人間。ダンスも歌も出来るし、ひらがなけやきで1番憧れている」と紹介されたほどで、加入当時の美玲に不足していたのは将来への不安から来る『自信』だけだったとも考えられる。

 

そしてけやき坂46から日向坂46への改名をもってセンターのポジションを2期生・小坂に譲るが、タイミングを同じくして『non-no』の専属モデルへの起用が発表。活躍の幅をさらに広げることとなった。一方でこのタイミングで彼女の口から出たのは再び「不安」の二文字だった。2019年3月26日付けのブログで彼女はこう語っている。

 

実は、今まで活動してきた中で、私はグループをやめようと真剣に悩んだことが2回だけあります。

まずは2期生の追加募集を知った時。これはキュンの個人PVにもなっています。



あとね、もう1つは実はわりと最近です。

本当に、結構悩んでました。

逆にこれを今言えるって言うのは、その考えが一切消えたから言えることです。


自分でも今まで1度しかやめたいと思ったことがなかったので、やめたいと思った時自分が一番びっくりしました。
考え方が昔と変わったんだなーって。


毎日毎日悩んで泣いて、どうしたらいいかわからなくて、米さんにもメールして話を聞いてもらう約束をしたり、スタッフさんに打つメールの文とかブログにあげる文を考える所まで考えていました。

そこまで考えていたのは今回が初めてです。

佐々木 美玲 公式ブログ 2019.3.26 23:48

 

この真相は未だに明かされていないが、この時期は姉妹グループ欅坂46内部のゴタゴタや、後に活動休止を挟むことになる二期生・濱岸ひより(18)の体調悪化、1stシングルの活動を最後に卒業を発表した柿崎芽実の件など、様々なことが重なっていた時期だった。

だがこのブログで「卒業の考えが一切消えた」と名言している通り、彼女は本来の明るさを取り戻した。かつて2期生の加入を恐れていた彼女の姿はどこにもなく、活動休止に入った後輩・濱岸ひよりを休止中も常に励まし続け、彼女の復帰にも大きく貢献している。

こうした彼女なりの優しさや、後輩一人ひとりを細かくフォローする姿は、キャプテンの佐々木久美から「日向坂のお母さん」とも称されたほどだ。マイナビニュース『日向坂46キャプテン・佐々木久美の奮闘 「本当は先頭に立つのが苦手」も覚悟を決めて』より

news.mynavi.jp

 

しかしファンの目には一抹の不安が映っていたことは否めない。というのも、1stシングル『キュン』ではフロント(1列目)に抜擢されたものの、2ndシングル『ドレミソラシド』、3rdシングル『こんなに好きになっちゃっていいの?』では2列目、4thシングル『ソンナコトナイヨ』では最後列(3列目)になるなど、徐々に後方のポジションを任される機会が増えていた。

 

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

 

だがそんな逆風を追い風に変えられるのも佐々木美玲の強さだ。2020年3月には日本テレビ系列で放送されている朝の情報番組『ZIP!』の情報コーナー『流行ニュース キテルネ!』のリポーターに抜擢。同年7月にはテレビ東京の『ドラマ25』枠で放送されていたテレビドラマ『女子グルメバーカー部』にも単独出演。かつてAimerのMVに出演した時と同様、個人の活動を通して自分の知名度を上げ、グループの知名度拡大にも貢献した。

 

また7月に開催した無観客ライブ『HINATAZAKA46 Live Online, YES!with YOU! ~“22人”の音楽隊と風変わりな仲間たち~』で彼女が見せたパフォーマンスも印象的だった。けやき坂46時代に披露していた『期待していない自分』では、歌詞の中で激しく苦悩し葛藤する主人公の姿を痛烈に表現していたが、同ライブでは打って変わって、苦悩を達観し自らの足で歩みだそうとする主人公の姿を表現した。次に向かって歩みだそうとする今の自身を投影したかのような表現は、美玲の心境そのものだったように思えた。

 

そして同年8月、グループの冠番組『日向坂で会いましょう』(テレビ東京)で、9月23日にリリースする1stアルバム『ひなたざか』のリード曲『アザトカワイイ』で美玲がセンターに返り咲くことが発表された。

18日には同曲のMVが公開。小坂がセンターを務めた楽曲とは異なり、美玲が中心となって周りを包み込むような、あたたかみを感じるMVとなった。これまでリリースしたシングル4曲が”日向坂46としてのアイデンティティの模索”だと捉えるのであれば、今回の楽曲はけやき坂46の頃にあった「無邪気さ」や「がむしゃらなマインド」を再び取り入れたような仕上がりになっている。

 

www.youtube.com

www.amazon.co.jp

 

かつてけやき坂46の先頭に立って形のない未来を全力で追っていた美玲が、今度は日向坂46の殿(しんがり)としてグループのありのままを支えている。グループとしても個人としても、様々な活動を経た2年の間に、彼女はまた新しい変化と成長を遂げていた。

人ととしてもパフォーマーとしても進化し続ける彼女の姿に期待せずにはいられない。今後も佐々木美玲の行く末を要チェックだ。